財政破綻・国家破綻警告(リスクシナリオ)

今後のリスクシナリオ

bomb
債務残高の増大に歯止めがかからない場合、予想される現象をあげてみた。財政破綻そのもの(破産=債務不履行=デフォルト)である場合もあるし、それを防ぐための方策が大きな副作用を生む場合もある。(実質的破綻=テクニカル破綻)

国債の暴落

膨張し続ける債務残高が返済不能と市場が判断した時点で、国債価格が暴落する。これは金利の上昇と同義語なので、国債残高に対する利払いの増大を意味する。
仮に金利が5%上昇すれば、利払は43兆円増えると言われる。 
現状を見ると5%台の金利水準は想像しがたいが、80年台には長期金利は12%台になったこともあり、上昇にはずみがつけば5%程度の水準は非現実的な水準ではない。この時点で財政破綻は決定的となる。
2010年に実質財政破綻したギリシャ、アイルランドはぞれぞれ長期金利が13%、10%台に上昇し、1998年のロシア危機では長期金利が80%(短期金利は170%)にまで上昇し、ロシア国債はデフォルト(債務不履行)となった。

信用不安(取り付け)

国債価格の暴落は、個人資産の価値の毀損を意味する。
直接国債を購入している個人は多くはないが、国民資産の多くは、実は「ゆうちょ」などの銀行を通じてすでに国債を大量に保有している。ちなみにゆうちょの預金の8割は国債に投資されている。
国債価格の暴落は個人の預金額の減少を意味するので、銀行の支払い能力に疑念が生じる。よって、不安に感じた個人が銀行店舗に殺到し、取り付け騒動が起きる。結果、金融機関が破綻し信用不安となる。

国債の日銀引き受け

上記の現象に対応するため、日銀が国債を引き受けることが考えられる。通貨の発行機関である日銀は、理論上無制限に通貨を発行し国債を買うことができる。
もっとも、財政法5条で日銀の国債引き受けは現在禁止されているが、国会決議で解除することは可能。あるいは、現在でもオペレーショの一貫として銀行が保有する国債を買い取りを実施しているので、これを増額すれば実質的に日銀の直接引き受けに等しくなる。これらの対処により、狭義の破綻(デフォルト=債務不履行)を回避することはできる。
ただし、ハイパーインフレ等(下記参照)の強烈な副作用を引き起こすこととなる。あるいはその意図を持って、あえて国債引き受けを実施することもありうる。
また政府が直接通貨を発行する政府紙幣の発行も検討されたことがある。政府紙幣の解説はウィキペディアを参照されたい。

ハイパーインフレ

国債の日銀引き受けは、通貨の無制限の増加、つまり通貨価値の下落を意味する。通貨価値の下落は、同時に相対的な物の価値(物価)の上昇につながる。こうしてインフレが進行することとなる。
また、物価の上昇は実質的な借金の価値を減少させるので、政策当局があえてこの策を採用するバイアスをもっている。(「合法的徳政令」、「インフレ税」などと呼ぶ人もいる。)経済学者の野口悠紀雄氏やコンサルタントの大前研一氏もインフレが日本の財政問題の「解決」の唯一の手段と主張する。(下記引用)
「・・・となると、現実的な選択肢は「インフレ」だけ、ということになる。現にアタリ氏(フランスの経済学者であり『国家債務危機』の著者)自身も「(公的債務に対して)採用される戦略は常にインフレである」と述べている。お金をたくさん刷って、あるいは日銀が吸収している資金を市場に供給して貨幣価値を下げ、借金をチャラにしてしまいしょう、というわけだ」
(大前研一氏 債務危機で日本政府が切れる唯一の「カード」

終戦直後の日本でも、実質的な日銀引き受け国債である復興金融公庫債が発行されハイパーインフレが起きた。4年間で物価がなんと60倍に達したほど。
過去に財政破綻した諸外国でも通貨を増発しハイパーインフレが起きたことは有名。例えば財政危機に見舞われたロシアでは27%(98年)、インドネシアで58%(98年)、エクアドルで52%(99年)など。(東洋経済2010年7月31日号)また、トルコでは2001年に物価が1週間で70%まで上昇したと言われる。

円の暴落

通貨価値の下落は、同時に円の為替レートの下落を意味する。通常ハイパーインフレとなった場合は、通貨価値は大幅下落するので円レートが1/2, 1/3になることもありえる。(例えば対米ドルで80円が160円、240円など)
過去に財政破綻国の通貨(ロシア・ルーブル、トルコリラ、韓国ウォンなど)が暴落している。弊社が調べた範囲では、下記の下落率が記録されている。

通貨 時期 下落率
韓国ウォン 97-98年 約50%
ロシア・ルーブル 97-99年 約80%
トルコ・リラ 95-2001年 約97%
アルゼンチン・ペソ 2001-2002年 約70%

預金封鎖

(狭義の)財政破綻を回避する最も手っ取り早い方法は、今ある国民の預金をそのまま国債の返済に充当することである。幸い国民資産は1400兆円あると言われている(ただし負債とのネットでは1000兆円程度)ので国の債務残高が900兆円あったところでまだおつりがくる。
実際日本でも過去2度預金封鎖が行われている。具体的には、新通貨への切り替えと称し、旧通貨を無効にし新通貨への交換の制限をする手法や預金残高に一律で財産税をかける(例えば20%や30%)手法が考えられる。(終戦直後、その両方が同時に実施され90%相当が没収されたと言う)

前述の大前研一氏は、過去に財務省が通貨の切り下げ、新紙幣発行の混乱に乗じて、額面の2割くらいを財産税として徴収する計画があったと指摘している。(下記引用)

「実際、財務省はインフレ政策にシフトしている。それに加えて、デノミと新通貨も検討の対象だった。通貨の切り下げ、新紙幣発行の混乱に乗じて、額面の2割くらいをさらってしまえ、ということである。ところが、新紙幣発行については数年前に噂こそあったものの、ATM製造会社からこの情報が漏れて大騒ぎとなり、政府が新通貨を旧通貨と取り替えるときに2割くらいパクるという悪巧みは流れてしまった。」
(大前研一氏 債務危機で日本政府が切れる唯一の「カード」

その他増税

もちろん財産税だけでなく、数々の増税で歳入を増やすことを試みるはずである。常に議論になるのが消費税の税率アップだ。
ただし財政を均衡させるためには、最低でも25%まで引き上げる必要があるし、早期にその政治的合意を得るのは不可能なため、「増税で財政再建を行うには、もう遅きに失している」(経済学者 野口悠紀雄氏)との指摘もある。また、2050年には高齢化が更に進むことから、「国民負担率と高齢化の国際比較」の分析によると消費税率は50%までの引き上げが必要との試算もある。(みずほ総合研究所 WEDGE 2010年8月号「社会保障の維持には消費税10%でも足りない」)

IMFによる財政支援

IMFによる財政支援を受けた場合、IMFの用意したプログラムにしたがって再建努力してゆくことなになるが、それを予想する上で有名なのが「ネバダレポート」である。これは2002年日本が金融危機に瀕していた時、IMFが作成したものとして、民主党の五十嵐文彦議員が国会で紹介したもの。内容は、
① 公務員の総数の30%カット、及び給料30%のカット、ボーナス全てカット
② 公務員の退職金は100%すべてカット
③ 年金は一律30%カット、
④ 国債の利払いは、5~10年間停止
⑤ 消費税を20%に引き上げ
⑥ 所得税の課税最低限を年収100万円まで引き下げ
⑦ 資産税を導入して不動産には公示価格の5%を課税、債権・社債については5~15%の課税、株式は取得金額の1%を 課税。
⑧ 預金は一律1000万以上のペイオフを実施し、第2段階として預金額を30%~40%財産税として没収する。

なお、これがほんとうにIMFによって作成されたかは、定かではない。ただいずれにしても、財政破綻してIMF支援を受ける場合は大幅な増税を要求されることは想像に難くない。(好都合に国内に1400-1500兆円と言われる個人資産がある)

暮旅を「いいね!」と思う方は、是非クリックをお願いします。↓↓↓